一見理にかなっていそうな風貌と、チープな見た目。にも関わらず見た目にそぐわない吸引力から、登山やキャンプでは必携とされているエマージェンシーキット
そう、ポイズンリムーバー。
「必要だから」「みんな持ってるから。」
という出自の分からない情報をみつつ、とりあえず自分も購入。
ただ必要性は分かるんだけれど
やはりなんだか腑に落ちない。
ならば腑に落ちるまで
効果があるのか調べてみようじゃないの。
という記録。
ポイズンリムーバーを使う場面とその使い方
ポイズンリムーバーとは、文字通り体内に入った毒の除去を目的とした製品。
ポイズンリムーバーが活躍する場面といえば虫に刺された時だったり、蛇に噛まれた時など、刺した(噛んだ)生物の種類にもよりますが、それなりに有事の時。
そんな時に活躍するとされているポイズンリムーバーの使い方を確認すると、大体がこのように書かれています。
刺されたりより刹那、器具を患部に当て、吸ひたまへ(意訳)
と。
要するに虫に刺された(蛇に噛まれた)ら、可及的速やかにザックからエマージェンシーキットを取り出し、患部に当て、吸引を行う必要があります。
ここで気になるのが
果たして刺されたことに気がつくのだろうか。
という点。
キャンプや登山で刺してくる生物一覧
屋外で出会いがち、遭遇した途端に熱い接吻・ボディタッチを求めてくる困った虫達をざっと調べてみました。
気づかない・気づくの境目があることをお忘れなく。
生物 | 刺されていることに | 症状(疾患) |
蚊 | 気づかない | 発疹・痒み・腫れ |
ブユ(ブヨ) | 気づかない | 発疹・強い痒み・腫れ |
アブ | 気づく | 発疹・強い痒み・腫れ |
ハチ(ススメバチ) | 気づく | 疼痛・発疹・強い痒み・腫れ・AS |
マダニ | 気づかない | 灼熱感・痒み・ライム病・SFTS |
ヒル | 気づかない | 出血 |
毛虫(チャドクガ) | 気づく | 発疹・強い痒み |
この一覧で見て欲しい項目は、刺されたことに気がつきやすいのか否か。
屋外で遭遇する虫のほとんどは、刺されている時には気づかない。
痒みや痛み・腫れてから初めて、刺されたことを自覚するのです。
昆虫に刺された場合、患部は諸々の生体反応(アレルギー反応や外的刺激)により赤く腫れて、痒み(痛み)が出現してきます。
患部周囲が腫れた(浮腫)段階で刺された患部の穴は多少なりとも圧迫されているわけです。
ポイズンリムーバーでの毒液除去効果は、個人的には皆無だと思っています。
登山系メディアの意見を見てみる
ここでポイズンリムーバーを推したり、そうでなかったりする登山系メディアの見解だったり、その中で引用されている著書からの一文を拝借。
要約すると
効果があるかもしれないし、無いかもしれんわ。
という感じでしょうか。
真っ先に行なうべきとされていた、ポイズンリムーバーでの毒の吸引。しかしやらないよりは多少は良いかもしれない、程度の効果のようだ。
https://www.yamakei-online.com/yama-ya/detail.php?id=1615
ハチなどの有毒生物に刺された時に直ちに患部に押し当て、ピストンを引いて陰圧で吸引するツールである。刺咬直後であれば毒を吸い出す効果が多少は期待できる
夏秋優著 虫と皮膚炎
ポイズンリムーバー不要という結論に落ち着きました。
こうなってくると多少なりとも重量があり、嵩張るポイズンリムーバーをエマージェンシーキットに含む持っていく利点は、全く感じられません。
極力肌を露出しないとか、虫除けスプレーを使うとか、刺されたあとに有効なステロイド外用剤を持っていくとかの方が、よっぽど虫さされには効果的であるように思います。
もちろんショーツは履きます(圧倒的開放感)。
重要なのは虫さされを予防することと、刺されたあとのケア
- 外出時は肌の露出を減らし、虫よけスプレーを携帯する
- 虫に近寄らない
- 虫にさされたり咬まれたら、患部を流水で洗い清潔にする
- 市販薬で症状をおさえる
以上は塩野義製薬からの引用。このあたりは気が向けば別記事にまとめようと思います。
ではまた。