家族日記

墓へ参ってきた。

家族

生来夏休みの勉強を計画的にしてこなかった自分。

もちろん今なお先延ばしにしている事柄が、1つか2つ程度ある。

いやもっとか。

それはともかく、自分の場合、この一つが墓参りだった。

墓参りで露わになる事実と対面するのが億劫で、とりあえず父の許可が出ないことを言い訳に先延ばしにしていた。

しかし何事もツケが回ってくるように、色々なタイミングが合致して、ついに墓へ参ることに。

参っちゃうね。

当日は朝から雨が降り、ひんやりとしていた。

寂れたスキー場とは逆に、今なお盛況ぶりを見せるホテルを発ち、車を走らせること1時間。墓がある寺周辺のスーパーに到着したのは9時ごろのこと。

諸般の事情により、寺には駐車せず。

顔を知られた人間に、決して見られてはいけませぬ。

気分は墓荒らしである。

きっとコロナ禍で変わった箇所もあるのだろうけれど、成人になって以後、数年に一度しか帰ってこなかった不孝行者には、それにはてんで検討がつかなかった。

開店しているか分かり辛い暗い和菓子店も、取り扱う書籍の3割がいかがわしいピンクな本屋も、当時のままだった。

つまり、自分の懐かしい故郷だった。

違うのは、ここには祖父も祖母もいないことと、更に会いづらくなった、父の大事な家庭があるだけ。

「祖母に会いに来る」という目的をなくした今、ここに来る目的は墓参りか結婚の報告しか無くなってしまったように思う。いくら「気を使わない、またおいで。」と言ってくれていても、「気を使わない」と言わせている申し訳なさが勝つ。

諸般の事情により少し迂回をしいしい、寺に到着。日時も相まって、寺はしんと静まり返っていて、聞こえてくるのはカラスの鳴き声だけ。

この寺に来たのは数年前の祖父の葬式以来だった。

なんとなくでも墓の位置は覚えているもので、自分が属していた一族の、未だ光沢が保たれている墓標には、くっきりと祖母の名が刻まれていた。

祖母の死は事実だったようで、今こそ悲しさを精算する時だった。

どうやらここ最近墓参りに来たものはいなかったようで、妹と共に見聞きした通りに墓を綺麗にし、花を供えて、線香に火を灯し、合掌。

妹の手前泣きそうになるのを堪えるため、合掌はほんの数秒で済ませた。こんな時でも見栄を捨てきれない惨めな男。束の間会話ができなかったくらいに悲しかった。

墓を去る時、花束はそのままにした。

次墓へ来るのが父であれば感づくのだろうか。

なんて事を思いながら、取り壊されずに残っていた懐かしい祖父母の家の前を通った。夏には花が咲き乱れていた庭も、今は見る影もなし。

ただただ雑草が生い茂っていた。

どうせ来たからには。と思い、大の大人が2人して庭に入りセンチメンタルな思い出に浸っていると、背後から足音。幸い見知った顔では無かったけれど、きっと怪しまれただろう。

事情を知らなければただの不審者である。

これで肝を冷やしきった妹と自分は、早急に母の待つ車へと戻り退散。

遠くで響くパトカーのサイレンを聞きながら、次来る時はいつになるんだろう。なんてことを思っていた。

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yuruyama
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