30年ほど続いた、平成最後の夏。どうせなら例年にした事がない体験をしたい!と思った方も少なからずいたはず。
僕の場合、それは登山での長期縦走でした。貴重な夏休みを駆使し、3泊4日の日程で。
富山県は折立から日本100名山の一つであり全国の薬師岳の最高峰である薬師岳に寄り道し、知る人ぞ知る日本最後の秘境。雲ノ平を経て、長野県は北アルプスの象徴である槍ヶ岳を目指した記録です。
3泊4日は長いから、前編・後編の二部構成になるよ!
前編は、折立から薬師岳。そして雲ノ平を経て鷲羽岳の記録です。ではでは。
山行記録
富山で前泊し、悪天候の予想される折立へ。
薬師岳の登山口である折立へは、富山地鉄が運行しているバスを利用しました。
大阪から公共交通機関を利用してアクセスする場合、前泊は必須。
人生初の長期縦走の前夜祭ということでお寿司でも食べたかったのですが、到着時間が遅く結局牛丼を食らう羽目に。天気予報通り、早速雲行きが怪しかったのを覚えています。
翌朝無事にバスに乗車。8月16日当日は、大雨に見舞われる予報だったにも関わらず、バスは大勢の登山者で溢れかえっていました。流石夏山シーズン。
富山駅から1時間程度バスに揺られ、到着した薬師岳登山口。下山者の皆が皆、雨と風に吹き曝された姿を呈していました。
因みに登山口近くにトイレがありますが、色々とジャングルな状態でした。(笑)
どうなることやら・・。
慰霊碑の前で安全登山を誓い、いざ出発です。
折立から太郎平小屋を経て、薬師岳山荘へ
薬師岳の登山口である折立から次の休憩点になるであろう三角点までは、傾斜のある登山道が続きます。しかし、三角点から太郎平ではそれに対してなだらかな、木道で整備され歩きやすい道が続きます。
周囲の展望も開けているので、天気さえ良ければきっと素晴らしいお散歩になるはず。
そう天気さえ良ければ。ね。
とはいえ予想では登山開始時。つまり折立から雨に降られるだろうと思っていたので、気持ち晴れやかに登ることができました。
絶賛曇っていましたが・・。
昼以降は大雨という予報を頼りに、心なし早めに歩みを進めることに。
所々に秋の訪れを感じます。
お盆を過ぎると、山の夏は駆け足で過ぎ去っていきますねぇ。
幸運の天使は前髪しか無いと言いますが、夏山にも同じことが言えるかと。
オニヤンマカラーのポールは、どうやら積雪量の把握に使用されているのだとか。確かに雪の中だと見やすそうです。
三角点を過ぎてからはこのような広々とした尾根歩きが続きます。徐々に強くなる風が雨を予感させていたので、立ち止まっての休憩は最小限に。ひとまず太郎平小屋まで行ってしまうのが吉だろうと判断しました。
折立から三角点までの道が嘘に思えるほどに道が整備されています。
雨に濡れたチングルマ。最近チングルマが花ではなく木であることを知りました。
折立から約3時間。どうにか雨に降られることなく太郎平小屋へ到着。10分程度の休憩がてら、中にお邪魔することにしました。
小屋それぞれの特色ってあると思うんですが、ここは随分アットホームな印象を受けました
雨マークが笑ってら。あはは。数字が心を折ってくる。(笑)
この時点でこの日の薬師岳登頂は断念。問題は、先の薬師峠テント場まで行くか否かでした。
このペースでいけば昼過ぎには到着できるだろうと考え先を目指すことに。
結論から言えば、この出発と同時に雨が降り始めました。まー大雨。太郎平小屋での宿泊も考えましたが・・。諦めが悪く先へ。
それはそれは大雨でした。自分の登山史上ワーストの雨量。背負っているminiの内部に使っているパックライナーは、訳あって普通のポリ袋だったので装備も不安。
更に歩いても歩いても、次の目的地に着かないのです。
薬師峠に到着しましたが・・あまりの雨の強さテント設営は断念。少し先の薬師岳山荘まで避難しようと思い、歩き続けました。
道中カメラもザックへ入れ、ひたすら歩き続けました。数人とすれ違いましたが、最後の1時間程度は独り歩き。薬師岳山荘に着いた時の安心感たるや・・。
雨で濡れた登山装備を乾燥室で乾かし、山荘内で本を読んで、寝て、食べての繰り返し。
夜にかけて更に強くなる雨は、明日の晴れ予報を疑うくらいには不安にさせてくれました。
結果論ですが、良い体験です・・。
前線一過。暴風の中薬師岳山頂へ。
翌朝、雨は止んでいました。
残っているのは暴風だけでした。
否、暴風が残ってしまっていたのです。ひとまずザックは山荘にデポし山頂へ。
夜明けは薬師岳山頂で見てやる。というやけくそ根性で暴風に見舞われながらまずは避難小屋跡へ到着。薬師岳山荘から薬師岳山頂までは遮蔽物がなく、風の影響をモロに受けることになります。
故マイケルジャクソンのゼロ・グラビティが、何の装置も使わずに再現できたといえば風の強さが分かるでしょうか?(笑)
風って強すぎると息ができないんだなぁとやべぇやべぇ。やべぇ。とりあえずやばいしか言ってなかったように感じます。
語彙力も彼方へ。
無くしかけた語彙力を取り戻し、無事に薬師岳山頂へ到着。風こそ強いものの、絶景が待っていました。
風に躍る雲が延々と巻き上がっていました。湧いては消え湧いては消え。
この時薬師岳山頂はカップルの方々と僕一人。広い山頂で贅沢な時間を過ごしました。
朝焼けが赤から黄に移り変わり、それに映えるカール地形がとても綺麗で。
見惚れていました。
相変わらず強い風にも若干耐性が着いたのか、下りは難なく山荘までの道程を辿りました。
いつか薬師岳から先、立山まで繋ぎたい。
それよりもまず、この日の目的地である三俣山荘までの長い道程をこなさなければなりません。山荘内で行動食を朝ごはん代わりに、太郎平小屋へ。
いつかまた。
絶景を満喫しながら、薬師沢小屋へ。
昨日の雨の中では振り返ることのなかった、振り返ったとしても見えなかったであろう絶景が広がっていました。北アルプスの最深部はこんなにゆったりとしているのかと感動。
雲ノ平を経由する予定でしたが、十分ここも秘境だなぁと一人ニヤニヤ。
道行くおじさまにこの先数日晴天が広がるというヤマテンの情報を教えられ、更にニヤニヤ。
そんなわけで恐らく宿泊者が全員出発した後であろ太郎平小屋へ再訪。薬師沢の増水状況を確認しに小屋へ行ったところ、何やら作戦会議的なものが開催されていました。
中の若い方と目が合ったので尋ねると、通れますよーと。あの雨で大丈夫なら、余程のことがない限り大丈夫そうです。
太郎平から黒部五郎岳・薬師沢の分岐以降は、数回の登り返しがあるものの沢まで下りが続きます。笹に囲まれながら整備された木道を歩いているととても気持ちが良かったです。
槍ヶ岳や穂高にはない、雄大な自然が延々と続きます。
薬師沢までは、数回沢を渡ります。岩と岩に橋がかけられているので、やや安定性に欠けます。基本的には木道が続きますが、木が腐っているものがいくつかあり、時折シーソーの要領で木が浮き上がります。ご注意を。
薬師沢小屋は思っていた以上に大きく、綺麗でした。登山だけではなく、渓流釣り目当てでくる方もいるのでしょうか。
そして北アルプス奥地の湧水ということもあり、とても美味しかったです。ここで再度水分を調達。水分は大事。
この先雲ノ平までは延々と急登が続きます。薬師沢小屋で休憩すると良いでしょう。
急登を終え、秘境。雲ノ平へ。
先日の白峰三山以降、脆く見えるつり橋にお世話になることが多い。この吊り橋もそうですが、落下に対するプロテクションが無いに等しいのでご注意ください。(笑)
長い、そして急な登り。楽園まで最後の試練と思い黙々と登りました。
苔が生えているあたり、前日の雨関係なくこのあたりの岩は湿っていそう。滑らないように気を使います。
そんなこんなで雲ノ平の一端へ。
これは・・。雑誌でこそ見ていましたが、北アルプスの奥地にこんな雄大な高原が広がっているだなんて。とりあえず圧倒されていました。昨日の雨も影響してか、より綺麗に見えていたと思います。
雲ノ平にはアラスカ庭園や奥日本庭園、スイス庭園等いくつかのスポットがあります。
今回は経由地としましたが、いずれここでゆっくり過ごしてみたいものです。
本日の三俣山荘までの道程も残り半分を過ぎ、薬師沢小屋からの登りで消耗していたので雲ノ平山荘前でしばし昼ご飯がてら休憩をとることに。
靴と靴下から足を開放し、ぼーっとしていました。
雲ノ平山荘を後に。
水晶岳と、そこから伸びる赤牛岳までの稜線。
この山行で歩きたい山が、一挙に増えてしまいました。
明朝に登った薬師岳があんなに遠くに・・。少し寂しさに見舞われましたが、この山行中。薬師岳はずっと見えていて、謎の安心感を提供してくれました。
祖父岳を経て、鷲羽岳山頂を踏む。
雲ノ平から三俣山荘に至る道程は3つほど選択肢がありますが、大きく分けて
黒部源流経由
鷲羽岳経由
になります。今回はできるだけピークを踏みたいと思っていたので鷲羽岳経由をチョイス。その場合通ることになる祖父岳からは、子の縦走のゴールである槍ヶ岳。そして鷲羽岳、三俣山荘がまとめて望むことができます。
いやぁ。大勝利でしょう。
聞き覚えのある声の主を探すと、ライチョウもこの景色を楽しみにやってきたようです。
若いライチョウなのかそそくさと逃げて行ってしまいましたが、元気をもらえました。
ワリモ岳からみた鷲羽岳。ガレ場・ザレ場が連続しますが、それも相まってにじみ出るイケメン感。
日本100名山、いくつ目になるか分かりませんが鷲羽岳へ登頂!
鷲羽岳から見える山は、ほぼほぼ見えているんじゃないかと思うほどに、どの山もくっきりと拝むことができました。これは岩の殿堂剱岳。いずれ登りたいですねえ。
鷲羽池と槍ヶ岳。明日は無事に槍ヶ岳へ立てるのでしょうか。
鷲羽池までも下ることができるようですが、山荘の到着が遅くなってもいけないと思いパス。
目当てはジビエシチューでした。(笑)
待ってろいジビエシチュー。
前編のまとめ
初日こそ大雨に見舞われましたが、2日目からは御覧のお天気。北アルプス奥地での登山を満喫することができました。ライチョウとの出会いや絶景の数々。どれも思い出深いものばかりです。
特に雲ノ平から見た水晶岳が忘れられず、早くも登りたい欲に駆られています。(笑)
休みが欲しい。
一度くらい仕事の事等すべて忘れて登山を楽しみたいものです。
後編は、三俣山荘から双六岳、そして目的地である槍ヶ岳までの道程となります。
最後まで読んでいただきありがとうございました!