年末年始、冬山を堪能するのもまた一向。
2018年の登り納めに、兼ねてから行きたいと思っていた年末年始シーズン、積雪期の燕岳へ2泊3日で行ってきました!
宮城ゲートから延々と続く12kmにもおよぶ林道歩き、秘湯として知られる中房温泉での宿泊、そして合戦尾根を経て憧れの山小屋であった燕山荘に小屋泊し燕岳へ登頂。
とても充実した年末の3日間でした!
燕岳について
燕岳は標高2763mの山。北アルプス(飛騨山脈)に属し、1934年には中部山岳国立公園に定められました。登山口は中房温泉です。毎年GWから11月下旬まで中房温泉までバスが運行しています。
燕岳までは北アルプス三大急登の一つである合戦尾根(他に烏帽子岳へ通じるブナ立尾根、剱岳へ通じる早月尾根)を登ることになりますが、丁度いい個所にあるベンチや合戦小屋のおかがでさほど苦労なく登ることができると思います。
北アルプス初心者向けの山として、各登山雑誌やサイトで挙げられる燕岳ですが、初心者向けとされる所以は以下のポイント
自分も北アルプス初めてという方を連れていくなら、絶対燕岳ですね。(笑)
積雪期の燕岳登山
毎年11月末から燕岳の登山口である中房温泉へ通じる林道、中房線が閉鎖されます。そのため中房線の始点である宮城(みやしろ)ゲートから中房温泉まで、約12kmの林道歩きが余儀なくされます。燕山荘ホームページによる所要時間は登りが4~5時間、下り3時間程度となっています。
一般的な日程は
- 1日目:宮城ゲートから中房温泉へ。中房温泉にて宿泊。
2日目:中房温泉から燕山荘まで。天気により燕岳登頂。
3日目:燕山荘から宮城ゲートへ下山。
となっています。体力に自信のある場合中房温泉をパスしてそのまま燕山荘もしくは合戦小屋付近でテント泊ということも可能だそう。
今回の山行を経て思う事ですが、第3ベンチから先は吹雪だととても休憩しようとは思えないコンディションになるので、くれぐれもご注意ください。
尚冬期の中房温泉宿泊はどうやら電話でしか予約できません。ご注意を。
今回のルートとコースタイム
JR大糸線穂高駅からタクシー利用で宮城ゲートまで(約3500円)
12/29宮城ゲート(8:11)⇒中房温泉(11:47)
12/30中房温泉(6:40)⇒第一ベンチ(7:27)⇒第二ベンチ(7:55)⇒第三ベンチ(8:37)⇒富士見ベンチ(9:17)⇒合戦小屋(9:55)⇒燕山荘(11:44)
12/31燕山荘(7:49)⇒第一ベンチ(10:12)⇒中房温泉(10:33)⇒宮城ゲート(13:15)
林道歩きが果てしなく長いです。特に下山時は更に長く感じられました。(笑)
ルートとコースタイムはあくまで参考程度にお願いします。
積雪期燕岳山行記録
宮城ゲートから中房温泉へ
もういくつ寝るとお正月。12/29は宮城ゲートから中房温泉までの4時間程度の林道歩きということで、比較的ゆっくりとした朝でした。
ヤマテンの天気予報通り、穂高駅から見える常念山脈は真っ白け。12/31までの2泊3日の日程中、最も天気が悪いのが中房温泉から燕山荘へ行く12/30ということに憂いつつ、丁度来ていた南安タクシーに乗り込み、積雪期燕岳の登山口である宮城ゲートへ向かうことに。タクシー代は片道3500円でした。
燕岳への長い登山の始まりとなる、宮城ゲートに到着したのは8時頃。ここで最終準備を整え、いざ出発です。ゲート奥に見えているのは登山指導所。ここで登山届の提出と、ちょっとした山岳警察からの質問を受けました。
夏期以上に無謀な登山が困難となる冬期、少なくなったとはいえ登山者への指導ご苦労様です。
そんなこんなで、中房温泉までの長き林道歩きが始まる!
ありがたいようで少し辛くなる中房温泉までの距離標識・・。
とはいえ普段バスで素通りしてしまう中房温泉までの林道。同じ12kmであるはずなのに、見た事のない(普段バス車内は寝ている。)社があったりで全く知らない山に登るみたいでワクワクしていました。(笑)
寒波がもたらした積雪はこの林道にもあったようで、トレースを眺めながらどんな人が歩いていたのだろうと想像する遊びをしながらテクテクと距離を稼ぎます。道自体は舗装されていて歩きやすいが、所々で凍結しているので気を抜けない。
「信濃富士」として知られる有明山への表参道を発見したり、曲沢だったり第五発電所だったりの施設に新鮮味を覚えつつ、誰かのトレースをなぞって歩いてみたり。こうでもしないとやっていられない長さ。12km。
道中休憩スポットなどで人には遭遇しましたが、やはり夏山よりは圧倒的に登山人口は少ないのでしょう。夏期に目にするマダム世代は今回一人も見かけませんでした。
宮城ゲートから中房温泉までの道程、最も凍結している箇所は第五発電所から信濃阪までの区間でした。チェーンスパイクがあれば快適に歩けると思います・・。
宮城ゲートから歩くこと3時間半。ようやく本日のお宿であり、明日の出発点である中房温泉へ到着しました。長かった・・。
本当に長かった。
最後の方は道中で見かけたつららを蹴りながら歩きましたよ。えぇ。
中房温泉での暖かい一時
中房温泉でのチェックインを済ませ、まずは登山恒例になっている(?)カレーを頂く事にしました。
良くも悪くも普通のカレーでしたが、登山中に食べると格別に美味しく感じる謎です。(笑)
カレーを食べた後は、お部屋である竹8の部屋へ(梅やら松やら竹やらあります。)
中房温泉は日本秘湯を守る会にも登録されている、由緒正しい古くからある温泉です。厳選00%かけ流しの中房温泉内には14ものお風呂があり、お湯めぐりをするのもいいでしょう。
但しお湯加減はなんというか、絶妙でした。冬場ということもあるのでしょうが、外湯に関しては人肌なのでいくら浸かっても温まらないというトラップ。
写真は御座の湯。個人的に一番雰囲気を感じられて良い湯でした。ちゃんと温まれます。
中房温泉ですが、普通の温泉宿だと思って行くと恐らく痛い目を見ます。山小屋に綺麗なトイレと比較的美味しいご飯。暖かいお風呂と個室にヒーターがある程度です。部屋の外は外気温とさほど変わらないと思います。
中房温泉での朝夕ご飯は、予想していたよりも美味しいものでした。
竹8で同室になり、一晩寝食を共にした3名方とのお話も面白く、今までの山行や明日の燕山荘までのアタックについて天気予報と出発時間を考えたりしました。
特にこの中のお一人とは、なんとこの先随所で遭遇することに。何なら帰りの穂高駅でも出会うという偶然具合に山での不思議なご縁を感じた登り収めでした。(笑)
猛吹雪の中、合戦尾根を越えて燕山荘を目指す。
翌朝極寒の部屋で目を覚まし、入らないお腹にご飯を詰め込み中房温泉を後にしたのは6時30分過ぎ。
この日の天気予報では午後から天気が回復するとのことでしたが、どうなるか分からないのが山の天気。特に厳冬期の北アルプスということを加味し、早めに燕山荘へ着く算段としました。結果論ですがこれが良かった。ちらっと見える青空に一喜一憂していたのがバカバカしい・・。(笑)
燕岳登山口である中房温泉から、燕山荘までは約1時間ごとに第一、第二、第三、富士見ベンチと休憩スポットが設けられており、富士見ベンチから更に1時間で合戦小屋へ到着します。登山ペース配分の良い目印になるでしょう。
無風や快晴であれば合戦小屋が燕山荘までの最終準備地点としては適しています。トイレありますし(とても大事)
しかし吹雪が予想される場合、既に暴風に襲われる場所に合戦小屋があるので最終準備は正直お勧めしないです。第三もしくは富士見ベンチで冬用のアウターやアイゼン、ピッケルを取り出すのが吉かと。
第二ベンチを越えたあたりでテントを張っている御仁が。いずれ積雪期でのテント泊を経験したいものですが・・重量がえらいことになりそうなので未だ踏ん切りがつきません。
様子が変わったのは富士見ベンチを過ぎたあたりから。本来であればここから富士山が見えるのですが、勿論この日は見えず。森林限界に近づいたこともあり、木々が受けていた風と雪とが容赦なしに襲ってくるように。
踏み固められていたトレースも、あっという間に雪が降り積もるおかげでモッフモフの新雪に消されてしまいます。
どんだけー。
冬期は燕山荘スタッフの方がワンド(赤い旗)を立ててくれているのでこれを頼りに進んでいきます。だいぶ心強いですねー。
合戦小屋が見えたことで少し元気が出たものの、この状況では長居はできないなと思ったのが正直なところ。手短に行動食を頬張り、アイゼンとピッケルを装備します。
この標識通り、中々に厳しい環境でした。それはそれもう。
体力面は未だ余裕がありましたが、この猛吹雪が続くと思うだけで少々不安に。(笑)
とはいえ年末年始の燕山荘を目指す方は多く、中房温泉で同じ部屋の方ともここで遭遇。勝手に元気を貰いながら先を目指しました。
ここからは吹雪が酷すぎたため、写真撮影もお終い。ザックにしまい込んだので道中の写真はありません。幸運なことに合戦尾根に出てからは少し風が和らいだので難なく進めました。合戦尾根は緩やかな尾根ですが、ルートを少しでも外れると踏み抜きます。
降雪直後などはワカンがあった方が歩きやすいと思います。視界不良でもトレースを歩くよう注意しましょう。
最も注意すべきポイントが、燕山荘直下の急登。この山行中最も傾斜があり油断すれば間違いなく滑落します。
冬季営業中の燕山荘での一服。
燕山荘に到着したのは11時30分頃。富士見ベンチから長い吹雪を乗り越えて燕山荘が見えた時の安心感たるや・・。冬期営業している山小屋は貴重ですね。
中に入るとベンチや椅子、雪を落とすブラシなどか用意されており、とてもありがたい。何よりも暖かいことがあり難い。チェックインを済ませると、記念の白いダースとしおり?がもらえます。
しばし雪を落としたり、乾燥室へ吹雪に曝されたアウター等を運び入れ、食事をとることに。
勿論カレー。登山中立ち寄る小屋ではひたすらカレーを食べている気がします。山小屋のカレーを制覇したい。
ここいらで写真の枚数が多くなってきたのでダイジェストで。年末の燕山荘は年越しムード一色。山で迎える年末ムードは初めてだったのでテンションが上がりっぱなし。
冬期の燕山荘では寒がりな方に湯たんぽ(500円)や毛布(無料)の貸出を実施しています。毛布は敷き布団の上に重ねることで抜群の断熱性をもたらします。是非お試しを。
休憩室に備え付けられたテレビにはイッテQ登山部の再放送が。この日の燕山荘は、きっと日本で最も登山部の需要が高い建物になったでしょう。(笑)
晴れ間を狙い、吹雪の燕岳へアタック
イモトアヤコを観ながらふと外に目をやると、少しですが吹雪が収まっていました。明日はピーカンの予報でしたが行ける時に行っておこうと思い立ち、急いで準備を進めました。
山男さん、こんな寒いのにいつも外にいるのね。
ウェブや雑誌で見ている以上に綺麗な景色がそこには広がっていました。燕岳を構成する花崗岩の灰色と雪の白が相まって一層綺麗に見える。
燕岳名物のイルカ岩やメガネ岩、雪山でしか見られないシュカブラを楽しみながら燕岳山頂へ。
無事に登頂!2018年の登り収めに相応しいといえる登山でした。この時は明日の日の出が待ち遠しくてたまりませんでした。
快晴とまではいきませんでしたが、これはこれで冬の厳しさや山の大きさが分かる一枚かと思います。あまりの風の強さにカメラのバッテリーが安定しません・・。そそくさと燕山荘へ帰りました。悔しいですね。
ポケットにバッテリーを出し入れしながらとれる内に何枚か写真を・・。低温環境でも安定したカメラが欲しいですねぇ。
燕岳から戻って再び燕山荘の乾燥室で色々と乾かしたり、燕山荘内をタイムラプスで撮影しているといつの間にか夕食タイムに。チーズハンバーグが美味でした・・。そして熱燗も良き。
目が覚めたのは深夜1時頃。ちらっと外に出てみると、日中の吹雪が嘘のような星空が拡がっていました。
絶景のモルゲンロート
外気温に慄きつつ、山小屋で初の熟眠感があったことに感動しつつ。
朝ごはんを済ませて足早に日の出をこの目とカメラに収める準備をすることに。きっと2018年体験した最低気温だと胸を張って言える。
そして最高の夜明けへ。百聞は一見に如かず。
昨日の吹雪が冗談に思えるほどの無風の中、絶景のモルゲンロートとなりました。カメラのバッテリーが瞬時に切れるので、ポケットの中で保温しながらの撮影。
残念ながら立山までの眺望とはいきませんでしたが、大天井岳へと続く表銀座。そして槍ヶ岳。遠くの南アルプスの山々、そして富士山など。見ごたえ十分の一時でした。寒いことに変わりはありませんでしたが、日の出はどこかほっと暖かくなりますねー。
山頂でのマジックアワーは待っている内は長いのですが、いざ陽が登ってしまうとあっという間。いつの間にか辺りは白と青の世界へ様変わり。
太陽は同じ時間で動いているはずなのに、日が出てしまうとあっけない。
さらば燕岳。良い登り収め。
2018年の登り収めとしてとても良いものになったと思っていましたが、登山は無事に下山してこそ。
2018年にやりのこした家の掃除やら、年始からの準備もあったので稜線での長居は無用。青く染まった燕岳を後にします。
登りは撮れていなかった合戦尾根はこんな感じです。登っていると中々の傾斜です。トレースを外れてちょっとお散歩でもしようものなら、谷底までグッバイになりかねませんです。
それにしても写真を撮る手が止まらない。早く合戦小屋まで行かねばならない。そう思いながらもこんな快晴無風の北アルプスに、そうそう来れるものではないと足を停める自分がいました。
大晦日である31日。年越しを燕山荘で過ごそうと多くの登山者が登ってこられました。羨ましい・・。恨めしい・・・。(笑)
皆楽しそうで、挨拶を交わすだけでもどこか嬉しい気持ちに。
なんて快適な合戦小屋。素敵。ここでピッケルをザックに収納し、目指すは中房温泉。下山時アイゼンを外すポイントですが、この時は暖かく第二ベンチ以降雪が腐っていたのでそこで外すことに。下手にアイゼンを着けていると木を傷つけますし、かといって着けないと転倒の恐れもあるので中々判断が難しい。
いい天気。本当に。
そして無事に燕岳登山口である中房温泉まで、無事に下山してしまいました。良い山行だった・・。と思うのは早合点。ここから宮城ゲートまでながーいながーい林道歩きがまっています。
下山の時ほど長く感じる道程ってないと思うの。なんならレンズに水滴付いとるがな!と気づくのもブログで振り返るときの醍醐味(言い訳)。林道の凍結具合は太陽の力もありいくらか改善していました。
歩きやすいとは言ってません。
歯が破壊されるかと思ったスニッカーズ。寒いと特に甘いものが美味しい。奥歯で咬むのがコツと学びました。そしてやや手が浮腫んでいますね。(笑)
宮城ゲートまであと少し。白く染まったアルプスもしばし見納めです。それにしても長い中房線の林道歩きだった・・・。
林道を歩いている最中に電話で予約しておいた南安タクシーに乗り込み、穂高駅に到着しました。南安タクシーの運転手の方によると、ここまではっきりと晴れ渡った日は中々ないとのこと。やったぜぃ。
タクシーから降りる時には既に下半身が筋肉痛に苛まれていたのが自らの運動不足の現れ。精進します・・。
穂高駅では中房温泉の泊まりから同室になった方と偶然の再開。(笑)
松本駅までの道中、山の話を共有できたことがとても嬉しかったです!
年末燕岳登山まとめ
積雪期の北アルプスの厳しさと美しさを知ることができた、2018年の登り収めとなった今回の燕岳登山。やはり美しい山。北アルプスの女王に相応しい。
宮城ゲートからの林道歩きは果てしなく感じられますが、中房温泉からは樹林帯の歩きが続く事や、各所に休憩ポイントがあるので比較的安心して登ることができました。
自分の中で、燕岳に登ると毎回素敵な出会いがあるジンクスが形成されつつあります。(笑)
最後まで読んでいただきありがとうございました!