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静寂の中辺路。テント泊装備を担いで歩いてきました。

山行記録
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遠くをみすえ、すっくと足で歩くのは人だけである。

人と言う字はなんとやら。

ひょんなことから生じた2連休。今回は歴史ある熊野古道を歩いてきました。

いくつもある熊野古道のルートの中で選んだのは、最もポピュラーな中辺路(なかへち)。テントを背負い、一泊二日の行程で歴史に溢れた山道を黙々と、粛々と歩いてきました。

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今回の中辺路参詣ルートと諸費用

熊野古道中辺路を歩いた時の諸費用とYAMAPのログ。

大阪-紀伊田辺駅前バス大阪-紀伊田辺間の夜行バス予約
2930円

紀伊田辺駅前のゲストハウス DJANGO Hostel & Lounge
3338円

紀伊田辺駅から滝尻までのタクシー
6500円

紀伊田辺駅から天王寺
4840円

人気のない、ロンリー熊野古道。中辺路。 / クレさんの活動データ | YAMAP / ヤマップ

11月初旬の中辺路は静寂と霧に包まれていた。

せっかくの三連休だというのに全国的に雨。紀伊田辺駅前にとった宿にはチェックイン時間を勘違いされ、1時間弱も待ちぼうけ。紀伊田辺駅近くにある味光路という通りを歩いてみても、変にギラついてるばかりで、入りづらい雰囲気の店ばかり。

目ぼしいものは見つからず、結局駅前の安いラーメン屋で晩飯を済ませた。

やっとの思いでチェックインした部屋には季節外れの蚊が飛び回り、3回ほど吸血を許してしまった。

なんだこれは、なんの罰ぞ。

そんなこんなで夜から襲ってきた湿っぽい空気は、翌朝も晴れる様子もなく、iPhoneの画面はすでに紀伊田辺駅から大阪への帰路を表示していた。

もう帰ろう。2度とここには泊まらない。熊野古道?

車で行けるのに、わざわざ歩く必要ある?

はいさようならー。

自暴自棄になりながら外へ出てみると、案外弱雨。

もう帰ってしまいたい自分と、ここまできたコストを気にする自分、熊野古道を歩いてみたい自分とがせめぎ合った結果

気がつけばタクシーは中辺路の起点、滝尻王子へ向かっていた。

本来であれば紀伊田辺駅から滝尻王子までバスだったのに・・・。タクシー代として、6500円という金額が無駄になったけれど・・・。

中辺路の開始地点、滝尻王子周辺にはカフェや案内所があった。下調べと違った事は、自分以外に誰もいなかったこと。もう少し誰かいると思っていたけれど、まさか自分ひとりとは思わなかった。バスの始発で来た場合、熊野古道の案内所が開いてないことが気になった。

と小言をボヤきながら、小雨とも霧とも言えない中を歩き始めた。

滝尻王子から剣山まではひたすら登る。例年と比べると明らかに頻度の減った登山。オーバーペース気味に急登を登っていると、有名な乳岩があった。

乳は嫌いじゃない。

下を潜ったりできるらしいけれど、とにかく先を急ぎたかったので今回はパス。剣山から先は緩やかな山道。尾根道だったり、トラバースするような道が続く。降ったりやんだりの雨の中を歩き続け、ようやく高原にたどり着いた。

霧の里の異名をもつ高原で、まず高原熊野神社の休憩所でエネルギー補給をした。その後少し歩くと左手に霧がうごめく絶景を見ることができた。ここの休憩所の方が先程の高原熊野神社よりも立派で、なんとも言えない感じになってしまった。

道の駅で小休止して近露王子へ

高原を抜けてから以後、本格的な山道となり人里ははるか遠くの彼方に感じられた。相変わらず霧が晴れない中、紅葉の綺麗な池を眺めたり、サワガニをやんわりいじめてみたりと飽きは来なかった。

中辺路道中にある道の駅
中辺路山中のサワガニ

大坂本王子まで来ると、近くを通る車の音が聞こえてきたため少しほっとした。車道を横切った先は道の駅で、ここでエネルギー補給をした。「今の時間は餌を巻いているので鳥がたくさん来ますよ。」という店員の促しもあり、肌寒さを感じながらも屋外での休憩。鳥のすばしっこさが可愛らしく感じた。

近露王子付近は民宿や温泉、キャンプ場などがあった。どこもコロナの影響もあり、地元民以外には優しくない対応を取る傾向があったよう。冷たい足湯を経験したのはこの日が初めてだった。

熊野古道の中辺路を歩くのであれば、きっと継桜王子近辺で宿を取るのがペース配分的には良いんだな。と歩いてみて悟った。

小広王子を過ぎたあたりの東屋で野宿

当初の計画ではこの道の駅から歩いてすぐ、宿場町があったらしい近露王子のキャンプ場でテント泊をし、翌日に熊野本宮へ行こうと思っていたけれど、この計画の場合、2日目の行程に余裕が無くなる。色々と思案した結果、小広王子を過ぎた先の東屋で野宿することにした。近くに綺麗なトイレが有り、川で水分補給も可能。

野宿にはうってつけだったように思う。

熊野古道中辺路での野宿

夜中は近くの沢の音に混じって何かが近づいてくるような足音が聞こえるような、聞こえないような、何とも不気味な一夜を過ごしましたとさ。

翌朝も相変わらず曇り。樹林帯で迎える朝は思ったよりも新鮮で、清々しい朝だった。

本当の静寂はここからだった。

樹林帯で迎えるブルーアワーを戦々恐々と乗り越えながら歩いていると、いつの間にかあたりは朝を迎えていた。中辺路の終盤の要、発心門王子までの道中には所々迂回路があり、中辺路の全てを当時のまま歩くことはできないようだった。

当時のままといえば、中辺路周辺の植生に関しても、きっと何の感動もないただの杉林ではなかったのだろう。

和歌山県の森林面積に対する人工林面積の割合は61%に達し、その森林景観からは本来の森林植生の姿を推定することが難しい。国有林、民有林を含む保安林、天然記念物指定の森林、土地所有者の理解により保存された民有林、渓谷や峡谷に聳える懸崖の植林不適地等、皆伐を免れ残存する天然林は、水源涵養機能、土砂流出防止機能、災害防備機能、保健休養機能、鳥獣の生息空間確保、自然景観資源といった、我々県民の生活環境を維持する上で重要な公益的価値を持つ。(引用:和歌山県の植物群落

それにしても、この日も終盤の発心門王子まで誰にも会わなかった。世界遺産というからには、こんな時勢であっても、それなりに人がいるとばかり思っていた。

時折近くを駆けるイノシシの足音に肝を冷やしながら、こちらもダッシュをかましてみたり、1人なのに随分と賑やかな参詣だったと思う。中辺路は由緒ある信仰の道、一歩一歩厳かに歩いた方がきっと良いのだろうけれど、自分を支えていたのは「風呂に入りたい。」「発心門王子はまだか。」という煩悩だった。

正念場は発心門王子を迎えてからだった。

久々に見る人間、そして人里。これらの安心感で一気に気が緩んでしまい、熊野本宮まできっともうすぐだ。という気持ちになってしまっていた。

煩悩☆大爆発

実際は発心門王子から熊野本宮までは距離7km、所要時間は概ね2〜3時間といったところである。綺麗なトイレに自動販売機、整備が行き届き、歩いても顔に蜘蛛の巣がまとわりつかない快適性。和気あいあいと喋りながら熊野本宮までの道を戻る参詣者。

その全てが、自分の熊野本宮への気持ちを昂ぶらせた。

半べその気持ちで熊野本宮へ到着した時には、既に身も心も疲弊しきっていた。久々のテント泊装備を背負って歩く距離ではなかったのだろう。こんな重装備で熊野本宮大社へ佇んでいるのは、もちろん自分だけで、この事実が更に自分を心を弱らせた。

気持ちを整え御朱印を頂き、お参り。どこか神々しさを感じつつ、達成感も味わうことができた。

ただ、バスもタクシーも時間の都合が合わず、あれだけ自分を苦しめた煩悩の対象である温泉に入ることができなかった。

きっとこれは神様の御心。「また来い。」ということなのだろうと思う事として、熊野本宮大社を後にした。

最後に。きっとまた訪れる熊野本宮。

寺社仏閣を訪れると、どこも違う雰囲気があるように思います。その違いが何から生じているのかは分かりませんが、今回の熊野本宮大社に関しては、その立地も相まって(本当に山中)神聖な雰囲気が特に強いように感じました。

今回歩いたのは熊野古道の中でも最もポピュラーとされる中辺路でした。この他にも小辺路や伊勢路など多彩なルートがあり、それぞれに違った魅力があるそうなので、機を見て再訪したいと思います。

ではまた。

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