いつの間にか夏を迎えていた上高地。

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大々的に、「旅行してきた。」と、言えない世の中になってしまった・・。

こんなことを憂いていた。

観る気もしないテレビでは連日連夜感染者数だの、感染経路だの。

読む気のしないSNSでは反安倍だの、緊急事態宣言がどうだの。

興味ないね。

飽きた。

山から遠ざかって久しい自分は、近畿圏内の山々へ足を踏み入れることについて一考してみたりした。

ただ幾ら考えても、自分が登山に求めていた達成感・非日常感は、きっと近所の山では味わえないだろう。という結論に至っていた。

電車に乗れば、小一時間で日常のテリトリーである。

そして毎月コンスタントに連休が取得できないことも、山に行く気の起きない要因の一つだったりするのだろうか。なんてことも考えたりもした。しかし連休があったとて、それを登山に費やせるほどの情熱は、当時の自分には無かったように思う。

気が晴れなかった。

天気も晴れなかったけれども。

また、コロナ禍の現状でアルプスなど山岳地帯が観光資源として重宝されている土地に、ほれー来たぞ。と気軽に行って良いものか。という疑念はずっとついてまわった。

ただでさえ高齢化の一途をたどる地方に、万が一自分が新型コロナを持ち込みでもしたら。と。

そんなこんなで行き過ぎた被害妄想も手伝って、緊急事態宣言が明けてからも、自分が「登山」を楽しんでいた日常には中々戻れずにいた。

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自分への言い訳を繰り返し、たどり着いたのは上高地だった。

曇天の田代湿原 水たまりに反射する針葉樹 雨に濡れる上高地へ続く木道

永遠に続くのではと思われた梅雨は、いつの間にかさっぱり明け、カレンダーはいつの間にか8月を迎えようとしていた。

まじ今年、はえーです。

職場と家との往復、たまーに平日ランチを楽しむ程度の生活で、流石に鬱憤が溜まっていた。いつもなら連休を積極的に取得し、嬉々として山行計画や天気予報の確認をしていたのに、それすらなかった。

悲しいこと。

そんな生活をしている内、いつしか「みんな行ってるし、政府のガイドラインを遵守していれば良いんじゃないか。」という思いが日に日に増していき、我慢ができなくなっていた。

世の一般人に比べれば、手指消毒のタイミングや、感染対策に関する知識はある方だし、大丈夫だろうと。それにここ2週間は本当に職場と家の往来だけだし。

これが本当にall rightなのかはさておき。

順調に感染者を増やすコロナの勢いは留まることを知らず、いつまた他府県への移動が制限されるか分からない。

これはもう行ける内に行っとくしかないだろうっ

たとえそれが登山でなくてもぉ!

えいやっと。

そうして上高地行きの夜行バスを予約していた。

乗り込んだ夜行バス。乗客は自分を含めて4名だった。

バス会社の行く末が心配になったけれど、自分にはどうすることもできないのだろうなと思った。

静寂を取り戻していた上高地。

雨の降る上高地 青空が覗く大正池の空 雨雲に覆われる穂高連峰

大正池に降りた時には、小雨がぱらついていた。

天気は昼頃にかけて回復していく予定だったけれど、少しの雨でさえ憂鬱を覚えるのは相変わらずだった。

大正池から田代湿原、河童橋へと歩きつつ、写真を撮り歩いた。梓川沿いのコースが通行止めになっていたり、土砂崩れで山肌が抉れていたり。コロナ禍でてんやわんやしている内に上高地界隈も様変わりしているようだった。

梅雨明けしたという吉報とは裏腹に、登山者も旅行者も明らかに少ない河童橋を見るのは中々珍しい光景だったように思う。

この日猿の姿は見えなかったけれど、小梨平と明神の間で子熊に遭遇した。

例年では目撃情報はあれど、夏山真っ只中の入山者の多いハイシーズンに、本当にクマなんて出没するのか・・。と驚くとともに、こらー成体のクマに出くわしたら助からないだろうと思った。

木漏れ日の中明神まで歩き、色々と願う。

河童橋から明神まではいつもどおりの林道歩き。道中にクマのフンらしきものが散見されたので、遠からず近からずの位置に極力人影があって欲しい1時間だった。

木漏れ日が差す明神に至る林道

明神に近づくに連れ、予報通り天気は回復していった。梅雨が明けたところで太平洋高気圧が思いの外頑張ってくれない傾向にあったのか、穂高には一日中雲が被っていた。

それはともかくとして、明神池では誰ひとりいない穂高神社にて写真を撮影していた。

コロナ禍でなければ、ここまで人の少ない明神池は見られなかったかもしれない。

悪いことしか無さそうなコロナ禍でも、思わぬところで恩恵を享受している人間がいるのだろう

そして自分もそれを享受した人間なんだろう。

誰もいない明神池 明神池に反射する明神岳

そんな事を考えていた。

自分は都合の良い時しか神様に祈らない質なので、穂高神社に祀られている神様に色々とお願いをしてきた。

何の神様かは大した問題ではなく、神様に祈っている行為が大事なんやで、きっと。

2020年、夏。

コロナに関係する色々、あれこれに気を取られているうち、いつの間にか季節は夏。

夏を迎えた2020年の上高地

諸手を挙げて喜ぶべき夏山シーズンであった。

しかし、何の懸念もなく登山をするのはどうにも自分には無理なよう。そうこうしている内に、山の短い夏は終わり、冬が始まってしまう。

来年新型コロナウイルスが落ち着く希望なんて今は無いけれど、せめて登山や旅行くらいは今年ほどの懸念を抱くことなく、楽しめる様になっていてほしいと思う。

かしこ。

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