紅葉に彩られた下ノ廊下と水平歩道をテント泊で楽しんできました。

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2023年の11月初旬、紅葉で有名な下ノ廊下(旧日電歩道)と水平歩道を歩いてきました。

今回は憧れの阿曽原温泉小屋でのテント泊でした。

登山をはじめてから下ノ廊下の存在は認知していて、毎年9月下旬ごろから阿曽原温泉小屋のブログを見つつ、行きたいなぁと思っていましたが天気と休みの都合が合わず・・・。そして2023年、ついにお休みと天候のタイミングが合致し歩くことができました。

滑落・死亡事故の多い場所なので最後まで行くかどうか迷っていましたが、無事終えてみると本当に行って良かったと思います。

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黒部川に沿って歩く、下ノ廊下と水平歩道について

下ノ廊下とは黒部ダムから仙人谷ダムまでの黒部川沿いの約16kmの区間。水平歩道よりも高度感はありませんが道幅が狭く、登山道の崩落によって高巻きするポイントもあるため、下ノ廊下の方が危険箇所が多い印象でした。

ちなみに廊下というのは「絶壁に挟まれた深い谷」を意味するようで、黒部湖を境に上流側は上廊下(上の廊下)、薬師沢小屋から源流部までを奥廊下と呼ぶようです。

水平歩道は仙人谷ダムから欅平に至る約13kmの区間で、標高約1000mの等高線に沿って水平に掘られています。

元々は黒部川での発電所・ダム建設のために切り開かれた道で、当時は歩荷で建築資材を搬入していたようです。その道幅は大体100cmもない位で、足を踏み外せば黒部峡谷の底へ真っ逆さま。

今回実際に歩いてみて、よく耳にする「黒部に怪我なし」の意味がよくわかりました。

始まりは黒部ダムから

扇沢から電気バスに乗って、黒部ダムへ。バスから降車した直後、左側(立山黒部アルペンルート)に行くよう案内されるところを、日電歩道方面へ直進。笑顔で見送ってくれる係員の女性が印象的だった。ここが阿曽原温泉小屋までのラストトイレ。思い残すことが無いよう準備を済ませて、黒部ダムの最下層へしばしの下り。結構な傾斜かつ落葉で登山道が見えにくく、滑りやすくなっているので気を遣った。

遠くに見える立山は白く雪化粧しているようだった。

下り終えてからは黒部川を渡り、右手側に黒部川を見るようにして進む。当初大した高度感もなく、せせらぎだった黒部川。「男子三日会わざれば刮目して見よ」というけれど、黒部川に関しては30分も歩けば大きく成長していて、高度感もぐんぐん増していった。気がつけば「黒部に怪我なし」を体感する高さを歩くようになっていて、左手は極力番線を掴んでいたいと思う高度感になっていた。

肝心の下ノ廊下の紅葉は快晴だったこともあって、まさに錦の一文字が似合う見事な紅葉(見頃を少し過ぎていた感も否めない)。そして写真で見ていたそれよりも圧倒的スケールで、何度も足を止め岩壁に映える紅葉をカメラに収めた。

徐々に道が険しくなっていく下ノ廊下と滑落事故

気楽に思えた下ノ廊下だったけれど、ある点を皮切りに様相は一転。

右側は断崖絶壁で圧倒的高度感。脳裏をよぎる「黒部に怪我なし」のフレーズ。登山者一人通るのがやっとの狭さの場所が多く、見知らぬ誰かにそっと抱かれるようにしてすれ違うことが数回あった。兎角気の緩みが大怪我やそれ以上に直結する場所なので、緊張の連続だった。

遠目から見ていた時には「あの高さから黒部川に降りれるポイントがあるのか?」と思っていた箇所に近づくと、それが滑落事故だったことが判明。

「阿曽原方面へ行けない」「行けないとはどういうことだ」など平静を装いつつもにじみ出てきてしまう現場の混乱感が今でも忘れられない。

聞くと番線を掴み損ねて谷底へとのことだった。割とすぐに小屋や警察への連絡は着いていたようで(奥地の割に電波が通じる)、意識はあったし同行者もいたため、対応をまかせて先へ向かった。

滝と花崗岩が美しい白竜峡。激流の十字峡

この後は下ノ廊下の見どころ白竜峡、そして1時間ほど歩いた先に十字峡が続く。

高度感は翌日の水平歩道に比べると大したことは無いけれど、道自体は下の廊下の方が険しく荒々しい。白竜峡付近は頭元の岩が低く、足元だけでなく頭にも気を使う必要がある。日本男性の平均身長しかない自分でもこの付近の岩場は狭く感じたので、きっと今どきの高身長メンズはもっと気を使うんだろう。

この先も右手に黒部川を見降ろしながら下ノ廊下は続く。天気が良く歩きやすい気候だった。ただ明暗差がありすぎて写真を取ってもなんとなく見た様子と違うので、露出ブラケットで撮影しておくんだったと後悔・・・。

十字峡は剣沢と棒小屋沢、そして黒部川の合流点。明らかな休憩適地を過ぎたところに展望ポイントがあったようだけれど、ここまで来ると右手に黒部川・左手に番線という構図に飽きてきた感も否めなかったので休憩もそこそこによく揺れる吊り橋を渡った。

いつ底板が抜けてもおかしく無さそうな吊り橋だった。

仙人谷ダムを超えて阿曽原温泉小屋へ

青く輝くS字峡を恐る恐る覗き込んで、関西電力の黒四発電所や鉄塔を通り過ぎた。

こんな山奥に人工物があるなんてSF感がすごいなぁなんて思っていると、長々とした下りへ。遠くからは何かしらのサイレンが流れていて、これもまた秘境感満載。今日の下ノ廊下の開始と同様、結構な降りを経て吊り橋を渡るとトンネル、そして仙人谷ダムへ到着。

ペンキ塗りたてだと書いてあるのになぜ踏む。

と見知らぬ誰かにツッコミをしぃしぃ仙人谷ダム内部へ。

このダムは本来なら十字峡あたりに設置される予定だったけれど、ここら一帯が中部山岳国立公園に指定されたため、止む無く仙人谷ダムに設置することになったらしい。花崗岩が侵食されやすく、他のダムよりも堆砂が進んでいるそう。

またこの周辺はいわゆる高熱隧道のモデルとなった土地。今なお高熱の断層が熱を発していて、施設内に入ると「むわっと」した熱気で満ちていた。

冬場でも暖房いらず。

仙人谷駅にはちょうどトロッコ(関西電力専用)が停車していて、まるで別世界。というか本当に奥地に発電施設があるなんて・・。ありがとう関西電力。

関西電力の大きな宿舎を後にして、人見平からはガッツリ登り返し。下ノ廊下をすでに7時間近く歩いていたのでこの登りでバテバテ。本当に長い登りだった。

しばらく歩くと、阿曽原温泉小屋の屋根が見え無事に今夜の宿に到着。剱沢小屋で見かけたような気がする女性スタッフに各種案内を聞いて、少し下ってテントを設営。地味に小屋とテント場間の高低差が面倒だった。テント場で人気だったのは谷側の開けたスペース。見た目の割にペグが刺さりづらかった。

阿曽原温泉小屋の建設されている土地は雪崩が多いらしく、毎年シーズンを終えると阿曽原温泉小屋は解体。来年まで資材は置いたままになるそう。小屋下には無数の空き缶が多数。

浸かる阿曽原温泉の露天風呂と、否めない芋洗い感

阿曽原温泉小屋のテント場から5分程度下ったところにある露天風呂。テントを設営し終えるとちょうど男性の入浴時間になったので、早速入浴。

基本的に日中は男女で時間交代制、夜中は混浴となるよう。

肝心の露天風呂は、洗い場なし、脱衣所なし、セルフサウナ?的な箇所あり。なんともワイルドな露天風呂だった。いち早く入浴したので最初はのんびり浸かれたけれど、10分もすれば足も伸ばせない程度の混雑具合。良くも悪くも初めての体験だった。

唯一良かったのは、見知らぬ誰かと温泉に浸かりつつ、対岸の紅葉に見惚れたことだった。

服を着る時間のおかげですっかり温泉のぬくもりを喪失してしまったので、テントに戻ってからは晩飯を食べて早めの就寝。雰囲気で缶ビールを飲んでみたものの体温は下がり、寂しさと苦味が増すだけだった。

対して寒くもなく、久々に夜中に起きることなく熟睡できた。

阿曽原温泉小屋を後に、一路欅平へ下山

翌朝。

気温差や立地の甲斐あってテントの結露は凄まじかった。

濡れそぼるテントの撤収に撤収に手間取った。続々と阿曽原温泉小屋やテント場から人が去っていく。なんとなく焦りを覚えながら、6時前に阿曽原温泉小屋を発った。朝食は味噌汁程度で済ませた方が朝(腹)の調子が良い。

水平歩道までしばらく登りが続き、いつの間にか水平歩道が始まった。昨日の下ノ廊下との違いは高度感と歩道の幅。歩きやすく、すれ違いもし易いけれど、落ちたら一発アウトな歩道が始終続いた。昨日と違ってあからさまな危険箇所が無く(あるんだけれど)、見事な紅葉や水平に掘られた歩道に感嘆しつつひたすらに歩いた。

折尾の滝や大太鼓などの展望スポットが続く。特に大太鼓周辺、奥鐘山西壁は日本最大の岩壁らしく、書き表しのない程度には大きかった。

所々で記念撮影を頼まれたり頼んだり。初日に比べると雲が多い天気で、見えるはずの後立山連峰は全く見えず。そして風が強く紅葉も終わりかけといった印象だった。そして落葉で登山道が見えづらくなっていて少々気を使った。

志合谷トンネルは手彫りのトンネルで、中はヘッドライト必須。このトンネルも手彫りというんだからすごい。

中は水浸しになっている箇所がいくつかあり、ローカットのトレランシューズなどはきっと浸水することになりそう。前から得体のしれない何かが走ってくるとか、ホラー映画のワンシーンを思い出してしまって、一人で怖気づいて足元ばかり見ていたおかげで2回ほど頭をぶつけた。ヘルメット必須です。

鉄塔の足元をくぐり少しあるけば、欅平までの急な下りの始まり。この急坂はしじみ坂(由来は不明)と言うらしい。翌日が土曜日ということもあって、本当に多くのすれ違いを浴びた。印象に残っているのは大きな鍋を担ぎ、阿曽原温泉小屋で芋煮をする男性だった。

そんなことは置いといて、阿曽原温泉小屋を出発してから約4時間30分で欅平に到着。欅平からのトロッコ列車だけれど、紅葉のハイシーズンは昼前になると満車が多くなり登山者は乗れないことが多いんだとか(片道の事前予約ができない)。

欅平駅でも飲食はできるようだけれど、身体は北陸の寿司を求めていたからさっさと宇奈月行きのトロッコに乗り込んだ。

初めてのトロッコ列車は寒かったけれど楽しかったし、金沢駅で念願のお寿司にありつけたので総じて今回の旅は満足。

純粋にワクワクした下ノ廊下と水平歩道の2日間

旅を充実させるのは新しい体験だと思っていますが、今回の下ノ廊下と水平歩道はどれも新しい体験で本当に楽しかったです。

何より紅葉は見事だし、最初あんなに小さかった黒部川が多くの支流の影響を受け、はるか下に轟々と流れる大きな川になる様を歩きながら体感できました。改めて黒部源流域の登山をしたくなりました。

道は始終危険箇所が続きますが、次回は欅平から黒部ダム方面へ歩いてみたいと思います。

ではまた。

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