2024年の7月中旬ごろ、南アルプス南部の千枚岳から悪沢岳、赤石岳、兎岳、聖岳を3泊4日の行程でテント泊縦走してきました。
今回の記録は3日目と4日目。3日目は今回の縦走中もう一つの見どころである兎岳から聖岳までの稜線歩きを楽しんで聖平までの予定でしたが、蓋を開けてみれば強風と雨の自分史上最も辛い登山となりました。
4日目は天気は好転したものの、2日間共の悪天候に気が滅入ったので聖沢へ下山しました。2024南アルプス南部縦走記録はこれにてフィナーレです。
前日の記録はこちら
南アルプス南部縦走の概要とログ
南アルプス南部の起点となるのは東海フォレストが運営する椹島。椹島までのバスは東海フォレストが運営する小屋のいずれか一つに宿泊する必要があるなど、山深いだけでなく少々特殊な宿泊システムのエリア。
今回はテント泊で縦走しましたが、どの小屋も綺麗に整備(兎岳避難小屋を除く)されていたので次回は小屋泊でも良いなーと思っています。
- 0日目静岡駅から畑薙ダムを経て椹島へ
大阪から移動
- 1日目椹島ロッジから千枚小屋へ
千枚小屋にてテント泊
- 2日目千枚小屋から百間洞山の家へ
千枚岳/悪沢岳/赤石岳に登頂:百間洞山の家にてテント泊
- 3日目百間洞山の家から聖平小屋へ(今回の記録)
中盛丸山/小兎岳/兎岳/聖岳に登頂:聖平小屋にて小屋泊
- 4日目聖沢へ下山(今回の記録)
白樺荘にて入浴し、帰阪
霧と強風の中に無間を見た南アルプス南部縦走 / クレさんの荒川岳・聖岳・兎岳(長野県飯田市南信濃木沢)の活動データ | YAMAP / ヤマップ
何も見えず、何も見いだせない、百間洞山の家から聖平の稜線歩き
登り始めから霧の中。
撤収している時に聞こえていた音からすると天気予報は概ね当たっていて、昨日よりも強い風。スタートから気持ちはどんより。昨晩の体調の悪さは若干治っていたものの、尚も本調子ではない。
とりあえず食べておけばどうにかなると思い、カロリーメイト4本を胃に流し込み、意を決して出発。
百間洞山の家を発って、早速始まるトラバース気味の急登はまだマシ。ペースが上がらないなりに、この調子なら特段支障なく聖平まで行けそうだと思いました。
ただ問題は稜線に出てからで、昨日よりも風は強く、稜線上では風を凌げる場所も少ない。心身の疲労が一挙に襲ってくるようで一気にペースダウン。昨日から続く展望の無さ、強風、濃霧に加えて飯盛中山、小兎岳、兎岳、聖岳と続く無間地獄のように感じられる稜線。眼の前を轟々と過ぎていく霧、登りきったと思った先にそびえ立っている次のピーク。風の無い場所などく歩きながらの補給を余儀なくされ、途中の兎岳避難小屋は崩壊しているし、挙げ句の果てに聖岳を超えた辺りからは雨も本格的に降り出す始末。
止まれば体温が奪われていくのは明らかだったので、とにかく摂取し続けて歩き続けることをひたすら繰り返しました。
自分史上、ここまでコンディションの悪い登山は初めて。
まさに踏んだり蹴ったり。
阿鼻叫喚。
特に兎岳から聖岳までの稜線のアップダウンは本当に耐え難いものがありました。
頬を濡らすのが霧なのか、露なのか、雨なのか、汗なのか、はたまた知らずに溢れ出た涙なのか分からない程度には疲弊しました。自分は一体何のために登っているのか、こんな苦行をして何か意味はあるのかという問答が小聖岳まで続きました。
聖平への逃避行
小聖岳から本格的に降り出した雨にも動じなくなった頃、聖平小屋に到着しました(10時半頃)。
本調子ならこのまま茶臼小屋まで行けたかもしれませんが、身も心も冷え切ってしまったのでテント泊はやめて小屋泊に変更。濡れそぼったウェア類を着替えて、しばしの睡眠。小屋の温かさと他人の声が何故か心強かったです。起きた頃には体調は概ね元通り。さっきまで稜線で一身に享受していた地獄は悪夢だったのかと思えるほどでした。
昼食を食べていると、この縦走中ほぼほぼ一緒だった方々も到着してきて、道中の辛さを話しました。やはり休憩場所がなく歩きながらの補給をしていたようです。本当辛かった。
着ていたウェア類をどうにか乾かそうとしたり、小屋でご一緒した方々と話したり、docomoの電波を拾いに散歩に行ったりして(小屋から5分程度)この日は終了。小屋の周囲は相変わらずガスだったり雨だったりの1日でした。
メリノは汗冷えしにくいけれど、乾燥室でもないと乾きませんね・・。
聖平小屋のトイレは紙を流せませんが、下界と変わりないレベルの水洗トイレ。水も豊富で過ごしやすい小屋でした。何より千枚小屋や百間洞山の家と違ってテント場と小屋が近い!
夏空との再開を経て、聖岳登山口へ下山
ここからは4日目の記録。聖平小屋から聖沢を経て椹島まで下山する1日となります。
この日の予報は早朝から昼頃にかけて天候が回復していく予報で、概ねその通り。なぜ下山するときは当たるんだと妬み嫉みもありましたが、今回はこれでおしまい。聖平小屋を出発したときはガスの中でしたが、徐々に陽の光が差すように。「太陽あったかい!」と太陽の偉大さを感じながらの下山。
道中は聖岳が見えたり、よく揺れる吊り橋(2本)を渡ったり、九十九折の登山道をひたすら下るなど、南アルプスの樹林帯の長さを改めて実感。崩落しかかった場所もあり、気の抜けない箇所も幾つか。
登りだとかなりきつそうでした。
9時前には聖岳登山口に到着。登山口には南アルプス南部恒例の自転車の数々。皆さん凄まじい体力をお持ちで羨ましい。聖岳登山口から椹島までは40分〜50分ほどの林道歩き。下山した途端姿を見せた太陽には尚も恨めしい気持ちがありましたが、次は光岳やら茶臼岳かなーなんて考えながら椹島ロッジまでの林道をたどりました。
椹島ロッジではバス待ちの方々で若干の混雑。畑薙第一ダムまでのバスに乗るためには、東海フォレストが運営する小屋に素泊まり以上が必要です。予定よりも1本早い10時台の便に乗れたので、畑薙第一ダムから徒歩30分程度下ったところにある白樺荘で入浴とお昼ご飯。
白樺荘の泉質はトロトロで良い湯。露天風呂からは茶臼岳の山容が綺麗。食堂では漬物はともかく、カツ丼がとてもボリューミーで嬉しかったです。白樺荘から静岡駅までの南アルプス登山線までは未だ時間があったので、尚も乾ききっていないウェアやバックパック、シューズなどを天日干し。何よりも太陽が一番早く乾きますね。
バスにて18時前には静岡駅は帰着。辛かった時間の方が長かったはずなのに、次はどの辺に登ろうかと考えながらの帰途。
南アルプス南部縦走を終えて
展望があったのは初日と最終日だけ。肝心の稜線歩きは全てが強風とガスの中という、悪い意味で心に残る登山でした。パッキングウェイトは概ね15kg程度、当初思っていたよりは歩けましたが、稜線でのバテ具合を考えると、やはり登山でものを言うのは体力。1にも2にも3にも体力だと痛感した縦走となりました。
アクセスし辛い南アルプス南部への再訪は、、また気が向いた時に考えたいと思います。
拙文ではありますが、どなたかの参考になれば幸いです。
ではでは。