深田久弥著「日本百名山」に登場する最北端の山、そして記念すべき1つ目の山が今回登った利尻山。
著書内で「島全体が一つの頂点に引きしぼられて天に向かっている。こんなみごとな海上の山は利尻岳だけである」と記載されている通り、利尻島内のどこから見ても(多少の差異はあれど)天にそびえ立つ利尻山。
まさに利尻富士。
海上の山として想起されるのは、日本百名山に名を連ねる屋久島の宮之浦岳があるけれど、こちらは山深く、宮之浦岳の他に黒味岳やオッチョム岳など多数の山が存在。
一方で利尻山は島内のどこから見ても、目立つのは円錐形をした利尻山ただ一つ。島全体が利尻山といった印象を受けた。レンタカーないしレンタサイクル(旅行者の記録では、皆が口を揃えて電動アシストを推奨)で利尻山を一周すれば、違った利尻山の姿(利尻山十六景)を楽しむことができる。
土壌(火山)の影響もあり利尻島では農業は発展しなかったようで、主な産業は観光業と水産業となっていて、人々の暮らしはあくまで海岸線付近で展開されている。ツアーガイドに聞いても、宿のスタッフに聞いても島の人口は減少の一途をたどっているらしい。
主な集落は沓形、鴛泊、鬼脇、仙法志の4つだが、登山・観光でお世話になるのは主にフェリーターミナルがある鴛泊と沓形の2つ。利尻空港はちょうど両者の中間地点にあって、多くはないけれど定期バスも運行されている。
肝心の登山ルートは元々は鴛泊、沓形、鬼脇の3つあったようだけれど、山頂での地元民曰く鬼脇コースは崩落が進んでいて、もうずっと登られていないんだとか。となると残るルートは鴛泊、沓形の2つになるけれど沓形コースの方も難所や鎖場が多く、最近はあまり登っている者を見なくなったとのこと。自分が登った日で沓形コースから登ってきたのは1組だけだった。
宿が鴛泊だったこともあり、今回は利尻山の王道、鴛泊コースを辿った。ちょうど登山口付近に整備されたキャンプ場、温泉(利尻富士温泉)、水場があって危険箇所も比較的少ない。
麓から見た通り、山頂までは実直な登りが続くけれど、要所要所で休憩しやすい。見晴台からは昨日訪れていた礼文島が見えた。
森林限界が本州の山よりも低いため、割とすぐに陽光に照らされて、それはほぼ下山まで続く。同じ宿の登山者は熱中症で下山を余儀なくされていた。最北の山と言えど、この日は異様な湿気と気温で、心身ともに下山の方が辛かった。
9合目以降は傾斜が増して、登山道は火山砂利で形成された崩落地が目立つようになる。固有種のリシリヒナゲシは、この辺にしか咲いていないようで、登るのに必死になりすぎるときっと見逃す。因みに利尻山の麓でもリシリヒナゲシに酷似した花があるようだけれど、園芸種ということ?
それはさておき利尻山登山の途中、登山道整備協力の一貫で土のうを持って上がる区間があった。眼の前に見えていたマリオ地帯(土管のようなものが幾つも)までの道程の果てしないこと果てしないこと。息も絶え絶えに登ると「サニブラウンなら5秒」という謎の煽り文句。
放り捨ててやりましょうかね、土のう。
そんなこともせず土のうを所定の場に置き、「またパリ五輪が開催すれば名前を聞くんだろうか。」なとど整わない呼吸を引き連れてもうしばらく登ると、ついに山頂。山頂はうっすら靄がかっていたけれども、島の輪郭や青空が見えて概ね満足。蝋燭岩の大きさは今まで見たろうそくの名を関したどの岩よりも荘厳だった。
山頂付近で軽く昼食を食べて小休止。テントウムシとカメムシの混合種のような、取り敢えず黒光りする甲殻虫がひたすら飛び回ったり肌を重ねてくるのが気持ち悪かったから昼食後は速やかに下山した。
勝手に恨まれるサニブラウンと利尻山 / クレさんの利尻山・長官山(北海道利尻郡利尻富士町)の活動データ | YAMAP / ヤマップ