【九州】国内最南端の百名山。淀川登山口から洋上アルプスの宮之浦岳へ。2泊3日の小屋泊縦走登山。

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2024年5月14日から16日の2泊3日の日程で鹿児島県屋久島にある日本百名山、宮之浦岳に登ってきた。

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大まかな日程とコースタイム

今回の屋久島・宮之浦岳登山での大まかな日程は以下

1日目:大阪から屋久島へ移動(直行便)。淀川登山口から淀川小屋(淀川小屋泊)

2日目:淀川小屋から宮之浦岳・永田岳に登頂し高塚小屋まで(高塚小屋泊)

3日目:高塚小屋から白谷雲水峡へ下山(もう1泊して翌日は観光)

洋上アルプス!宮之浦岳へ / クレさんの宮之浦岳栗生岳永田岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ

計画段階での憂い

大阪から屋久島の直行便を予約し、ネックだったのが淀川登山口までのアクセス。時間的に淀川登山口まで行くバスに間に合わないのである。こうなると代替案としてはタクシー一択。

数日前から屋久島のタクシー会社3社に電話していたけれど「予約できません」と即答。

なんかこう、もうちょっと思案する時間があっても良いんじゃないの・・。

と今回の屋久島・宮之浦岳登山は計画段階から若干憂鬱だった。

後々高塚小屋でご一緒になった方にこの件について聞くと、屋久島内のタクシーは14台しかなく、運転手のほとんどが年金生活だから、出勤も気まぐれとのことだった。これに加えて、ちょうど屋久島に行った日がクルーズ船が入船していたようで、即答される要因としては腑に落ちるものだった。

ただ無論予約・計画の段階でこの事情を知る由も無いから、当初の計画は白谷雲水峡から入山して白谷小屋にて1泊する予定にしていた。ただ白谷雲水峡から登る場合、淀川登山口からと比べて登る距離が長いこと、そして白谷小屋の不気味さがネック(宮之浦岳で使用する避難小屋の中で唯一の鉄筋コンクリート製・収容人数は最多の60名)だった。

1日目:大阪から屋久島、そして淀川登山口から淀川小屋まで

晴れマークが羅列された天気予報とは裏腹に、屋久島上空には分厚い雲が被さっていた。ひと月に35日雨が降るという過言は伊達じゃない。

屋久島に到着し、まずやるべきことはガス缶の入手。

屋久島空港内の売店にもガス缶はあったけれど(プリムス社)、前の登山者が使いきれなかったモノを観光協会に預けて(託して?)帰る事があるらしいから、空港から歩いてすぐの観光協会にてガス缶について問うたところ、足元からガス缶登場。しかもビッグサイズ。

「ソロなんですけどねぇ」なんてえり好みもしてられないので、ありがたく頂戴してタクシー乗り場へ向かう。

向かっていたところに一台のバス。なんと淀川登山口方面に連絡する、当初から乗りたいと思っていた最終バスだった。ただ虚をつかれてしまった結果乗り逃すことになった。バスは往々にして遅延するということを日頃から体感していたはずなのに・・。

大人しくタクシー会社へ電話すると難なく手配完了。何なら配車を待つ間もタクシーは2,3台暇そうにしていて、案外どうにかなるもんだなと思った。

屋久島空港から淀川登山口までは約1時間程度。

費用は1万円でお釣りが少し来る程度だった。道中何故か缶コーヒーを奢ってもらい、道中の観光案内や紀元杉での撮影タイムを設けてくれたので、バス見送りの悲劇は止むなく忘れることにした。

予期せぬ財布の軽量化だった。

淀川登山口から淀川小屋までは特段難所の無い登山道。辺りの苔具合は流石屋久島といった具合で、曇りも相まって涼しげだった。道中でこちらを気にせず新芽を頬張るヤクザルに遭遇。幸先良き良きと歩き続けると今晩の宿である淀川小屋に到着。

すでにテント場・小屋内共に先客が数名。結局この日淀川小屋には16名、テント場には7名程度が宿泊した。印象に残っているのはインバウンドのカップル、良く喋り山が好きそうな割に屋久島を灰皿代わりにする老人と、高塚小屋でもご一緒になった数名の方だった。

今まで事なかれ主義だったけれど、この老人を思い出すと今でも腹立たしい。

今度は理由を問うてみようと思っている。

それはともかく

水も補給し食欲も湧かない(大抵初日はこう)電波も通じないしですることが無いので、19時頃には就寝。続けざまにトイレに立つ音、鼾、ネズミにビニール袋を漁られる音、それに慄くインバウンド等々。それに音だけでなく振動も響く小屋で、苛烈な一夜。

星空はなおも雲に遮られていた。

便器の底からこちらを見上げているネズミが衝撃的だった。

2日目:咲き誇るヤクシマシャクナゲ。宮之浦岳そして展望の良い永田岳へ

この日は宮之浦岳に登頂して、高塚小屋まで行く予定。

天気や行程に余裕があれば黒味岳と永田岳にも登ろうと考えていた。周囲で続々とバーナーが音を立てる中、朝食など取る気にはなれなかったので、歩きながら行動食を貪ることにして、4時30分頃に淀川小屋を発った。

「屋久島には熊がいない」

この情報だけで些か暗い登山道もまったく怖くない。降雨量と水に恵まれた屋久島の登山道は所々ぬかるみ、所々は沢のようになっていた。登山道は岩を攀じ登ったりロープを掴む場面も増えてきた。

夜から分かっていた事だが、この日は曇天だった。東からガスが湧いてくる時間もあり、黒味岳への登頂は断念。先へ急ぐことにした。

栗生岳を経て登山道は登ったり下ったり。

結構な急登だったけれど、雲行きが怪しいという焦りから自ずとペースが上がる。宮之浦岳に登頂したのは7時30分頃。山頂には数名いたが皆足早に淀川小屋方面に去っていった。

宮之浦岳山頂は長時間滞在し難いほど強風だった。

ここで天気予報を確認した。午前中は雨がパラつくとの予報だったが、素人目には徐々に天候が回復してきたように見えていた。屋久島の天気予報は当たりづらいなんてどこかで聞いた情報を思い出しつつ、宮之浦岳でのタイムラプス撮影後、足早に高塚小屋方面へ行動を開始。永田岳との分岐で後ろを振り返ると本日初の青空が見えたので「これはっ!」と永田岳への登頂を決意。

長い下りとヤクザルの糞、咲き誇るヤクシマシャクナゲ、そしてひたすら続く急登だった。永田岳への登りは今回の宮之浦岳登山中一番きつい登りだった。

気がつけば雲は無くなっていて、真夏のような日差しが嬉しかった。

永田岳からは宮之浦岳はもちろん、口永良部島や麓の港まで言う事無しの眺望だった。淀川小屋から一緒だった御夫婦(のように見えたけれどはたして)と会話を交わしたり、写真を撮影したり。小一時間滞在してしまった。天候が良ければ永田岳への登頂は本当におすすめ

ここからはまず新高塚小屋を目指す。

山頂付近は晴れていたけれど、進む先は真っ白。これこそ屋久島という天気。先程の宮之浦岳やヤクシマシャクナゲの眺望で上がったテンションはどこへやら、眼前のガスの中に沈んでいくような心持ちだった。

とりあえず展望台からは何も見えず、水たまりに浮く大量の虫や周囲をひたすら飛び続ける羽虫が鬱陶しく不快な時間が続いた。そんな中淡々と下り、歩き続けて新高塚小屋に到着。

新高塚小屋周辺にはテントが一張りあるだけで、淀川小屋よりも圧倒的にカビ臭い小屋内は未だ無人。

新高塚小屋は見た目完全に某ホラー映画。

昨日の淀川小屋の宿泊者のうち、約半数は新高塚小屋に泊まる的なことを耳にしていたこともあって、自分は更に1時間程度歩いた先の高塚小屋で宿泊することにしていた。

平石岩屋あたりから一緒に歩いていた方は、先の高塚小屋に行ってテントが張れないor高塚小屋も満員という最悪のケースを恐れていたけれど、新高塚小屋があまりに閑散としていたため、きっと高塚小屋も大丈夫だろうということで、共に高塚小屋を目指すことに。

やはり下り一辺倒とはいかず、結構登る箇所もあったものの、無事13時過ぎに高塚小屋に到着。テントは0張りで選びたい放題、高塚小屋には3名ほど先客がいたけれど、この時間だと寝床も選び放題だった。

なりふり構わず一番下段をチョイス。

高塚小屋には水場がなく、縄文杉からほんの少しだけ下る必要があった。

人生初の縄文杉付近は、観光客もおらずしんと静まり返っていた。大きさにしばし圧倒されていると、荒川登山口まで帰りたいものの、タクシーはもちろん友人とも連絡が着かずに困り果てている男性に遭遇。聞くと縄文杉を観に来たけれど、ほか2人は途中でリタイア。その後一人で歩いてきたけれど、縄文杉から荒川登山口へ下るは良いが、時間的にその後の交通手段が無いとのことだった。

結局その後連絡が着いたようで、思い出にと一緒に写真撮影をして別れた。

無事に帰れたんだろうか。

その後ようやく食欲が復活したので色々と食べていると、高塚小屋の先客3名、淀川小屋でご一緒だったテント泊の男性、小屋泊の男性、淀川小屋・永田岳でご一緒だった御夫婦(きっと夫婦)、スイスから帰省がてら屋久島にやってきた御夫婦、黒豚(生肉)を背負ったツアーガイド、この日後半ほぼ一緒だったテント泊の男性などで集まって、高塚小屋横のデッキで談笑するように。思い出深いひとときだった。

結局この日の高塚小屋の宿泊人数は10人程度。夜はお隣でネズミが出るなどで、昨晩と同様あまり寝た気がしなかった。

うっう。

3日目:高塚小屋から縄文杉を経て白谷雲水峡へ下山

夜更けから始まった暴風は朝も続いていて、テント泊の方に聞いたところ小雨もぱらついたようだった。

この日は高塚小屋から縄文杉を経て白谷雲水峡に下山するだけなので、幾分ゆったり目の出発だった。

耐荷重が気になる木段以外は特に危険箇所もなく、ほぼ観光気分で縄文杉やウィルソン株、苔を見つつ下山。木々が過ごしてきた時間の長さを考えていると気が遠くなった。

大株歩道入口からはトロッコ道。

この先楠川分かれまでは延々とこの道が続く。新鮮に感じた廃線敷は15分も歩けば味が薄れる。密度が増してくるツアー団体に道を譲ることも増えて来ると、予定よりも1本バスを早めたいなと思うようになってきて、人のいない限りトロッコ道を巻くことに決めた。

歩こう歩こう私はげんき(睡眠不足)。

結局CTの半分くらいの時間で楠川別れに到着。ここから辻峠まではひたすら登った。そして辻峠に到着した時間的に10時台のバスに間に合いそうだったので、荷物をデポして太鼓岩に寄り道することにした。

太鼓岩へもひたすら登る。

太鼓岩からは太忠岳などが見え素晴らしい眺望だった。本当はもっとゆっくり景色を楽しみたかったけれど、昨晩からの暴風が続いていて、太鼓岩の上では身体が揺すられて恐怖心の方が勝ったので足早に辻峠へ戻って白谷雲水峡方面に下山。

まさにもののけ姫らしい苔むす森を楽しんで、10時過ぎには白谷雲水峡の入口に下山した。要所要所で一緒だったテント泊の男性や御夫婦と共に11時前のバスに乗り込んで、最後の談笑。

自分だけが安房方面に宿をとっていたから先に別れを告げた。

夜寝れなかったことが辛かったけれど、それ以外は本当に楽しかったと思える2泊3日の宮之浦岳登山だった。

自分はこの後、安房から海泊温泉までの往復44kmをレンタサイクル(クロスバイク)で移動するというとんでもない愚行に走ることになるんだけれど、これはまた別のお話。

2泊3日に及ぶ宮之浦岳登山のまとめ

宮之浦岳登山で一番メジャーなルートを辿った今回の登山。直前までどうなるかと心配していたけれど、終わってみると本当に登ってよかったなと。

淀川登山口までのバスが1日に2本しか無いことがネックだけれど、標高差を考慮すると淀川登山口から登ったほうが余裕ができておすすめ。下山後の白谷雲水峡からのバス本数が比較的多いことも相まって、下山後の選択肢が増えるのも今回のルート。

そろぼち九州も梅雨入りしそうだけれど、いつか気が向けば今回登ることのなかった黒味岳やモッチョム岳に登りに、屋久島に再訪したいと思う。

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