登山する山域によっては雪山もありうる、ある意味登山では一番むずかしい時期である10月下旬。今回は世間がハロウィンで賑わっているのを尻目に、八ヶ岳で登山を楽しんできました。
決してハロウィンぼっちというわけではない。
1泊2日の行程で北八ヶ岳ロープウェイを起点に、八ヶ岳最高峰の赤岳までテント泊装備を背負って縦走した時の記録です。
今回のコースタイム
1日目
北八ヶ岳ロープウェイ(9:23)−縞枯山山頂(10:10)−麦草峠(12:06)−白駒池(12:54)−黒百合ヒュッテ(15:17)
2日目
黒百合ヒュッテ(5:29)−東天狗岳(6:30)−箕冠山(7:18)−硫黄岳(8:32)−赤岳(11:08)−行者小屋(12:22)−美濃戸口(14:20)
山行記録
何だかんだで夏山の時期に訪れたことのなかった北八ヶ岳。個人的に八ヶ岳はとても思い入れのある山で、幼少期の記憶の多くに絡んでいるのは、この山域だったりします。
1日目:北八ヶ岳ロープウェイから黒百合ヒュッテへ
帰ってこない思い出に浸りつつ、いつもどおり出発の遅い茅野駅から北八ヶ岳ロープウェイ(旧ピラタスロープウェイ)のバスに乗り込み、坪庭に到着したのは9時過ぎ。1日目の目的地である黒百合ヒュッテまではコースタイム通りに行けば15時30分頃には到着する予定でした。
10月下旬ともなると、登山道のあらゆる箇所に凍結が見え隠れします。そういえば昨年も晩秋の時期に北八ヶ岳で日帰り登山をして、凍りついた木道に足を滑らせて思いっきりザックからコケたのを思い出します。木道だからといって人の手が加わっているからと気を抜かず、気をつけて下さい。
それにしたって縞枯山荘を目の当たりにした時の視界が一気に広がるこの雰囲気、どうにかなりませんかね。素敵で好きすぎるんですよ。
北八ヶ岳の苔の世界。
坪庭から歩くこと15分程度。縞枯山と雨池の分岐にあたる雨池峠を境に、どこへ行こうが苔が出迎えてくれます。今回はどうせなら最高峰の赤岳を一度目にしてから縦走をしようかなーと思っていたので縞枯山を経由することにしました。縞枯山へは雨池峠からの登りや、やたらに滑る岩場が連続するので、体力に不安があるのならば雨池経由でも良いと思います。
こちらも登山道はよく滑りますけれど。
白駒池といえば紅葉なのだろうが。
きっと紅葉の時期が一番賑わいを見せるのでしょうが、流石に10月下旬ということもあり白駒池周辺の紅葉は既に枯れてしまったようで、晩秋の寂しさが漂っていました。
それを差し置いてもすごい観光客の数で、白駒池の人気を思い知りました。白駒池周辺には白駒荘や青苔荘などの宿が営業しています。この内青苔荘にはテントサイトがあるので、まったり紅葉の時期にテント泊でもしてみたいですね。周辺には高見石小屋などもありますが、こちらはどちらかというと登山者向けの所謂一般的な山小屋かと。
そうそう、北八ヶ岳の登山道は雨が降った翌日なんかは非常にぬかるみます。ローカットシューズはおすすめしません。ドロドロになりました。
にうと中山峠を経て、本日のお宿。黒百合ヒュッテへ到着。
今回の八ヶ岳縦走は終始お天気に恵まれましたが、日が陰った時の樹林帯の恐怖感は一体何なのでしょう。
いっそクマでも出たほうが怖くないのでしょうか。
白駒池を越えてから黒百合ヒュッテへ至るルートには2通りあり、「にゅう」を経由するルートか、高見石小屋を経由するルートです。今回は通ったことのない「にゅう」を経由してみましたが、登山道が沼になっていたり、昼間だというのに木々で陽の光が遮られ薄暗くなったり、とりあえず精神的に色々とくるものがあったルートです。
どちらの登山道を経由しても、最終的に中山峠で合致することになるのでご心配は御無用。中山峠から10分程度で人気の高い山小屋である黒百合ヒュッテへ到着です。
到着時の気温は3℃。夜間の黒百合ヒュッテのテント場は勿論氷点下をむかえ、テント内の結露は朝方には凍りついていました。この縦走前に寝袋を買い替えたのが功を奏し、明け方まで快適に眠ることができました。寝袋は大事。
2日目:東天狗岳を経て最高峰の赤岳を目指す。
夏山と秋山の大きな違いの一つに、日照時間の減少に伴う行動時間の短縮化が挙げられます。夏山では特に無理の無かった日の出前からの行動も、秋山にもなると寒さが身に応えるものです。
前日の天気予報では2日目も晴れ。モルゲンルートこそ拝むことができなかったものの早朝のブルーアワーを楽しみながら東天狗岳へ登頂。ここから先の根石岳、箕冠岳・硫黄岳など南八ヶ岳へと足を踏み入れるのは今回が初めて。毎年のように積雪期の東天狗岳にはお邪魔していたけれど、南八ヶ岳はいつも眺めるだけでした。
今季初の霜柱。幼い頃は毎年見ることのできる冬の風物詩だったけれど、都会に住むようになってめっきり踏み潰す機会が減りました・・。
圧巻の爆裂火口と夏沢峠の静寂
箕冠山から夏沢峠までは標高を下げ、硫黄岳までは延々と容赦ない登りが続きます。峠は嫌いです・・。この先硫黄岳から硫黄岳山荘まで標高を下げ、横岳までまたもやきつい急登。立地的に日陰になるので、数日前の降雪が溶け切らずに残っていました。
硫黄岳(2760m)といえば爆裂火口。太古の火山活動が作り出した圧倒的スケールの断崖絶壁です。2019年には八ヶ岳では珍しいクマの目撃情報がありましたが、最終的にこの爆裂火口を滑落していく姿が目撃されています。果たしてクマの運命やいかに・・。
爆裂火口というネーミングが好き。
それにしたって八ヶ岳の中でも初心者向けとされている硫黄岳。どこから登るにしても割と長いアプローチになるので縦走路に組み込まれることが多いようです。南八ヶ岳といえば赤岳・横岳・硫黄岳の縦走がポピュラーですが、決して易しくない。普通に鎖場や岩場の連続する歩きにくい登山道が続きます。
おすすめはオーレン小屋から硫黄岳へ至るコースでしょうか。
おっかない横岳と赤岳。お守りのチェーンスパイクが大活躍。
硫黄岳山荘でキャッシュレス決済ができたことに感動を覚えつつ
初心者向けとされる山域であることも多いことも相まって、自分は八ヶ岳という山域を少々見くびっていたことをここで独白しておきましょう。
硫黄岳山荘から横岳へ至り赤岳へと向かう縦走路ですが、急勾配の岩場やトラバース、鎖はあれども果たして頼りになるかも怪しい設置のされ方。とにかく気を抜けない登山道でした。
赤岳天望荘にて赤岳前最後の休憩。登山道には数日前に降り積もった雪が乗っており、念の為にチェーンスパイクを装着。時間的に融雪してグチャグチャだったのでスパイクの効きはイマイチ。先日の富士山での滑落事故を受けた直後の登山だったこともあり、かなり雪上歩行には気を使いました。
無事に到着した赤岳からは富士山や南アルプスの名峰、遠くの北アルプスまで見渡すことができました。積雪期の赤岳は雪山初心者の最初の目標として据えられることが多いように思いますが、この急勾配を歩くのかぁ。と思うと行く気が失せます。笑
終バスに向けて、足早に下山。
赤岳山頂に到着したのは12時20分頃。休みはもう一日あったので赤岳鉱泉まで行ってもう1泊する予定にしていましたが「泊まったところで翌日は何をするでもない」という思いが強く、林道歩きを飛ばせば美濃戸口から茅野駅までのバスにも間に合いそうでした。
というわけで、南沢ルートで少し急ぎ目に下山することに。
完全に計画不足感が否めないですが、予定の急遽変更はソロ登山の醍醐味ですね。
違うか。
最後に。素晴らしき八ヶ岳縦走でした。
北八ヶ岳から南八ヶ岳の登山道や山容の変化が楽しく、樹林帯に広がる苔や白駒池の広大さ、硫黄岳や横岳、赤岳といった名峰を快晴の下で縦走できたのはとても楽しかったです。
晩秋の縦走だったけれど、雪に対する装備は必携だろうなと思います。北アルプスに行く時なんかは特に。
夏山と違い行動時間を短縮せざるを得ない事も、縦走の懸念事項としては大事でしょうか。次は南から北へ、全山縦走をしてみたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!